棚田とは、山の斜面等に階段状に造られた水田です。
少子高齢化による赤字経営・鳥獣被害等により放棄され、全国22万ha(東京ドーム約47000個分)のうち約40%以上が失われています。棚田は景観の美しさ・保水・洪水調整・地滑り防止・生態系保全などの機能があり、大切な存在です。だからこそ、お米を育てる体験、餅つきなど年間約60プログラム開催し、棚田の素晴らしさを伝えています。棚田LOVERSのSPJでは、次世代に棚田を残せるよう取り組んでいきます。
パートナー団体 | NPO法人棚田LOVERS |
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事業内容 | 「美しい棚田を未来へつなぐ 自然やいのちに感謝 愛の心を育み、楽しむ」 をキーワードに、子供たちの個性を生かしながら、主体的に活動していける自然体験プログラムを提供し、食や命、一人ひとりを大切にする心が育つことを目的として、いのちを育む場である美しい棚田を未来の子どもたちにつなぐ活動をしています。 |
参加メンバー | 社会人メンバー計5人 (開発:1人 システムエンジニア:1人 管理:1人 事業企画:2人 ) |
スケジュール | 期間:2023年4月~2023年7月 2023年4月14日(金)説明会(CommonRoom) 2023年4月下旬 キックオフミーティング 2023年6月7日(水)中間報告会 2023年7月24日(月)最終報告会 |
【プロジェクトの進捗状況】
棚田LOVERSの代表であり、棚田をこよなく愛する永菅さんこと棚田くんのコモンルームの団体説明をきっかけに、棚田LOVERSチームには、様々な年齢や背景をもつ社会人メンバーが集いました。
集まった理由も様々で、農業への貢献に興味があったと語るメンバーや、棚田の美しさに心を惹かれたと語るメンバー、世界農業遺産の授業で心魅かれた棚田の活動に身を投じてみたいと思ったメンバー、棚田くんのパッションに触れて突き動かされたメンバーや身体を動かして汗をかきたい!という理由で応募したメンバーもいました。
キックオフミーティングでは、自己紹介を皮切りにそんな思い思いの気持ちをメンバーに語り、プロジェクトへの気持ちを示す場となりました。
また、チームの名前は数ある候補から「それ行け棚田くん!」に決定しました。社会人メンバーがプロジェクトに関わることで、「棚田くんをさらなるSTEPに進めるんだ」と気持ちをこめたチーム名になります。
その後、「それ行け棚田くん!」チームは、定例会議の中で棚田LOVERSへの理解を深めていきます。現時点の棚田くんのイシューは?どのフェーズの課題を解決したい?ステイクホルダーとの関係はどうなってる?など、社会人メンバーは想像を膨らませて質問をしていきます。
また5/27,28には春のだんだん祭りが行われる兵庫県市川町の現地に行ってみる案も出てきています。
【2枚目の名刺が生み出し始めている「変化」とこれから】
このチームは早い段階から、各々の強みを理解しており、個々の個性を発揮しながら、得意なことがあれば自ら手を上げ、苦手なことがあれば得意なメンバーがサポートする風土が出来ています。
また当初、棚田LOVERSへ向けられていた質問のベクトルは、社会人メンバー自身の内なる声にも向いていきます。
・自分だったらどんな企画案を作れるだろう?
・やり切れる自信は現時点ではまだないが、これは全く新しいチャレンジになるはずだ!
・棚田くんだけでは加えられない要素を、「それ行け棚田くん!」チームとして入れられないか!?
これからこのメンバーが、どんなチームになり、その中からどんな取り組みをしていくのか。
また、各メンバーがどのような学びをこのプロジェクトから得るのか大変楽しみです!!
(たにけん、くんくん)
【プロジェクトの進捗状況】
「それ行け棚田くん!」チームは有志メンバーで、5/27,28と春のだんだん祭りが行われる兵庫県市川町の現地へ向かいました。
現地では、実際の棚田を見たり、棚田くんが主催しているお祭りの盛り上がりを感じたりしました。それだけでなく、実際に和歌山で棚田保全の活動をされている方に関わられている関係者の方と話したり、市川町の観光交流センターに足を運んで地元の方と話してみたりと、オンラインだけでは得られない様々な情報を肌身で見聞き・感じることが出来、チームメンバーにとっても学びの多い時間となりました。
その後、6月7日には「中間報告会」を実施しました。CR93で実施している他団体の発表を聞いて学ぶとともに、他チームもまじえたブレイクアウトルームで少人数のコミュニケーションをとる時間も設けられました。
中間報告後には、「なぜこの二枚目の名刺プロジェクトに参加したのか、改めて原点に立ち戻れる時間となった」「それぞれのバックグラウンドをもとに、リスクフリーな場でディスカッション出来ることは貴重」「各チームに個性があって面白い。うちのチームはリードする人が誰かに片寄らず、双方が意見を言いあってぶつけ合えるのが特徴」「(それ行け棚田くん!チームのチーミングについて、)ざっくばらんに本音を話しているのは、定例会議のチェックインの工夫や定例会議外でのコミュニケーションなど、色んな仕掛けが効いてきている」「前半はぐちゃぐちゃの1か月半だった。このぐちゃぐちゃ感が良いと思っていて、チームですったもんだやることで良いものが出来る気がしている」といった感想が上がっていました。
その後の定例会議では、だんだん祭りや中間報告の気づき、そしてこれまでのディスカッションも踏まえ、継続的に収入や仲間を得られる仕組みとしてファンドレイジングの取り組みが大きく前進しています。また、棚田の立地を活かした新しいイベントとして、ドローン企画が進んでいます。
【2枚目の名刺が生み出し始めている「変化」とこれから】
中間報告以降、「ぶっちゃけ…と思ってました」「本当は…と思っていた!」「これは〇〇と思います!」と、お互いに本音を言い合う発言が増えています。
昨今、「心理的安全性」というキーワードをよく耳にしますが、提唱者であるエイミー・C・エドモンドソン教授は心理的安全性の高い環境とは「チームのなかで対人関係におけるリスクを取っても安全だと信じられる環境であること」と話していたことを思い出します。
チーミングが進み、強い個性をもったメンバーが、互いを認め、本音で語り、各々の強みを活かして残り1か月半走り抜いた結果どこまで進んでいくのか。「それ行け棚田くん!」チームのゴールがどうなっていくのか本当に楽しみです!(たにけん、くんくん)
【プロジェクトの結果】
中間報告後の「それ行け棚田くん!」チームは、加速度的にスピードを上げて動きはじめました。
「基盤となる仲間:地元の人からの信頼の獲得」のために地元の既存サポーターへのヒアリングを行っていきました。また、ドローンに詳しい社会人メンバーからの提案で「継続的な集客:新しい集客イベント」としてドローン企画を出来ないかと模索をしていきます。そして、棚田LOVERSが継続的に活動を進めて行く為には「継続的に支援してもらえる機会や仕組み、運転資金を生み出す仕組み」が欠かせません。そこで、マンスリーサポーター(ファンドレイジング)を柱の企画とし、ファンドレイジング会社に依頼すべく、チームは申し込み資料作成と打ち合わせに多くの時間を割いて準備を続けていきました。
しかし…、これまで議論のフレームを作りディスカッションを進めていましたが、これまでの議論がひっくり返るような話が出てきたことで、すべての企画がホールドとなる出来事がありました。これによりチームは空中分解しかけ、これまで全力投球で取り組んできただけに、大きな痛みと落胆を感じる結果となりました。
この時点で最終報告まで残り1ヶ月を切っており、すべてのディスカッションを立て直した上で、残り期間の中で、棚田LOVERSが欲しかった具体的、かつ新しいWhat、Howを提供することは残念ながら難しく、すべての活動をストップすることを決めました。
社会人メンバーは、これまで棚田LOVERSとディスカッションし続けてきた我々として何ができるか検討し、原点に戻って、「Whyから再スタート」することとしました。通常オンラインで会議を行っていたのですが、文字通り、顔と顔を見てひざを突き合わせた リアルコミュニケーションの場が設けられ、会議では、ライフラインチャートを描き、棚田LOVERSの活動を元に行動原理をチーム全員で整理。吐露された人生観から、「何のためにやるのか、何を信じているのか、棚田LOVERSの存在する理由(Why)はなにか」を掘り下げていく時間となりました。
このプロジェクトを通して、「それ行け棚田くん!」チームから具体的なHowの成果は出ませんでした。
しかし、プロジェクト全体を通してメンバーが真摯に取り組み、意図せずチームが空中分解直前となるような大きな痛みを伴うプロセスがあったことをきっかけに、「棚田LOVERSが存在する理由(Why)」を掘り下げ本質にせまっていく、それをこれからも続いていく棚田LOVERSに届けるというより根源的な成果となりました。
【2枚目の名刺が生み出した「変化」とこれから】
【困難があった時にどう行動するか?】
皆さんは、「意思の疎通・方向性の共有が出来ていなかった結果、すべてがひっくり返った」と感じるとき、どう行動しますか?
人によっては投げ出したくなったり、あきらめたり、距離をおく人もいるのではないでしょうか。私もその一人です。
言うまでもなく、この「それ行け棚田くん!」チームも、それぞれが大きな落胆と痛みを感じました。しかし、痛みがあったからこそ、「直接会って話し合わなければ」「真摯に向きおう」「サポートプロジェクト終了までの限られた時間の中で何が出来るだろうか」と動いていく姿勢は、デザイナーとして関わっていた私自身そこまで出来ただろうかと思うほど感銘を受けました。
もちろん、一人ひとりが、その人だけで乗り越えられたわけではありません。
チームの中で「直接会って話し合おう」と言い出した人、こういう場にしようと声をかけリードした人、キャリアコンサルティングの資格をもっており代表の棚田くんの内面に迫ろうとした人、言葉を選びながらその豊富な経験と情熱で暖かく語りかける人、全体を俯瞰しながら言葉を投げかける人、自身の過去の失敗体験もつまびらかにしそこからの学びを語る人。苦しいことがあり一人では投げ出したくなる時に、チームでいることで乗り越えられたように思います。
【メンバーの変化】
はじめてのプロボノ活動でどこまで出来るか分からない、と当初不安だったメンバーも、他のメンバーから「常に俯瞰的で的確なコメントをする」とチームに大きく貢献をしてくれました。
また、今回は住んでいる場所や年齢、職種もバラバラなメンバーが集まりました。そのため、自分が普段過ごしている環境では得られなかった気づきを見つけたメンバーや、年上のメンバーとも対等に議論できる二枚目の名刺だからこそ、参加している年長メンバーの姿勢や発言の仕方、ふるまいが勉強になり影響を受けたメンバーもいました。棚田LOVERSの原点を探る中で、自身の深いところを見つめ直し、内省をするきっかけになったメンバーもいました。
社会人メンバーだけでなく、棚田LOVERSのメンバーも含めて、それぞれ今回のプロジェクトを通して何らかの変化がありました。この変化もメンバーに共通した画一的な変化ではなく、人それぞれです。この各々の変化も今回の成果物ではないでしょうか。
二枚目の名刺としてのサポートプロジェクトはこれで終了となりますが、棚田LOVERSの物語はまだまだ続いていきます。今後、この二枚目の名刺の成果を得た棚田LOVERSや、この経験を経たメンバーが生み出していくだろう社会の変化が今からとても楽しみです!
(たにけん、くんくん)